▼2016年10月15日(さ)+


*警告* これ以下はドシロウトの独自研究なので、ウカツに信用されないほうがよろしいです
半分はウソだと思って読んでください 何事もまず一次資料をあたりましょう


【イガリマとシュルシャガナは楔文字でどう書くの?】

シンフォギアG(2期)のOPできりしらのギアの名前の部分はラテン語
他のキャラはその聖遺物に関係する国や地域の言葉だというのに…(今更?)

*
(参考:戦姫絶唱シンフォギアG OPより)

背景が楔文字なのに2人の名前がラテン語で自分には違和感があり
楔文字での表記はどうなるのか?と思いIgalimaやShulshaganaで調べるも全く見つからない
だいたい見つかるのがこの2人の画像という本末転倒っぷり


【読み飛ばしても全く問題ない前知識】
※ほぼシンフォギアと関係なし

楔文字とは何かというシュメールの作り出した文字
ウバイド期のトークン(ハンコ)や古拙文字を経て作り出されたもので
形が作り出される経緯は漢字に似て面白いのですがそれは割愛

後にアッカドやバビロニア、ヒッタイト、ペルシャでもシュメールの文字は
語彙のある文字として、あるいはアルファベットのような「音」として使われていきます

ところでこのwikiのページの楔文字が見えるかな?
多分殆どの人は上のページのユニコード部分が見れないはず
ここのarchivedにakkadianフォントがあるのでこれをOSのフォントフォルダに入れると見ることができます

調べている間、楔文字や日本語フォントを切り替えて表記するエディターが無いので
メモするだけでもすごく困った
多言語エディターを謳っていても表示できるだけとか、書こうとすると別のフォントになってしまう有様
結局どうしたかというとClip studioでメモ
ペイントソフトの文字入力は1文字ごとに切り替えられるからこういう芸当ができる


そもそもシュメールってどの辺にあったの?というと今のイラクの南部
基本的に他の勢力も河の近くに首都や都市があるのに注意
実際にはチグリス・ユーフラテスの多くの支流があるのです

元の白地図は「白地図専門店」のフリー素材をお借りしてます

アッカドがシュメールに勝利して都市国家群が南部メソポタミア地域の統一国家になり
エラムとかに侵略されてそのうち勃興したのが古バビロニア
さらにそれを侵略して統一したのが北部メソポタミアのアッシリア

バビロンのところにカディンギラと書いてあるけど
これはシュメール時代の呼び方
ka-dingir-ra(カ・ディンギル・ラ)がアッカド時代に読み変えが起こり
kaがbab(どちらも門)、dingirが-ilim(どちらも神)となりbab-ilimすなわちバビリムとなったわけです
raは何よ?というとdingirに続く「ラ」の表音文字で意味は無い
dingirは神様を表す決定詞であったり(無音)、シュメールで一番古いアン(アヌ)神を示したり(表意文字)
dingirの楔文字を使うけど単に「アン」の音だけであったり(表音文字)
一般名詞としての神様の「ディンギル」という発音をするだけだったりするのでややこしい(表音文字)
この辺、最初全く分からなかった
参照
https://earlychurchhistory.org/politics/the-meaning-of-babylon/

メソポタミアもオリエント文化の一つなんだけど、外人がオリエントって言う場合は
ほぼエジプトを指します



【手がかりが見つかったぞ!】
さて、かなり苦労して最初に得た手がかりがこのページ
IGALIMAという記述と粘土板(cuneiform)の写しがある
この粘土板は何?というとシュメール第一王朝最後のウルイニムギナ時代の頃(紀元前2400年頃)の碑文らしい
そこのリンク先に行くと訳文のIGALIMAの近くにシュルシャガナと読めなくもない記述がある
10'. {d}ig-alim-ma-ra
13'. {d}szul-sza3-ga-na-ra
アッカド語の表記で[d]は神様の決定詞(限定詞) Zは発音記号・数字は単語の意味の注意、raは建てるという意味
つまり「神イガリマ」「神シュルシャガナ」の事が書かれていることがわかる
文としては「神イガリマのためにエ・メフシャガル神殿を建て(中略)神シュルシャガナのために?を建て」になる

ようやく見つかった

<閑話>
シンフォではザババは架空の女神だが、シュメールでは特に女神という表記はしない
なので女神ザババがいたとしても、{d}ZA-BA-BAと記される
ちなみに、王・ザババもいるのでややこしい
<閑話休題>


この粘土板の写しがあるサイトはCDLI "Cuniform Digital Library Initiative"
http://cdli.ucla.edu/
基本的にシュメール関連の粘土板の調査をしています が
無知な部外者にすさまじく不親切に作ってあるので、サクっと調べるのは無理です
このコラムの一番下に書いてあるoraccやepsd経由で調べることになります

次に神様の発音表記が合ってるかはOracc(Open Richly Annotated Cuniform Corps)で調べる
http://oracc.museum.upenn.edu/index.html
まず、イガリマ Igalima これは問題無し
シュルシャガナは発音表記としてはŠULŠAGANA
ハーチェク(Sの上のVみたいなの)はSHの置き換えとなるので
SHULSHAGANAとなる

碑文の写しに戻ると、どこの部分に記述されていたかというと図の通り
緑で囲っているのが神・イガリマ ピンクで囲っているのが神・シュルシャガナ
先頭にある*みたいなのが神様の決定詞・dingir

(CDLI RIME 1.09.09.03, ex. 01 より)

なんでかというと、丸まった碑に書かれているのを2Dに置き換えて写しているため

楔文字での神様の名前は探しやすい
アスタリスクみたいな文字(an 空や天という意味転じて神様)が神様の名前の先頭にあり
これが神様の決定詞(限定詞)となる


碑文の文字にしたがってakkadian fontで書いたものがこれ
(イガリマのalimは時代が新しくなるとU+1210Bになる)

単語の意味は単純に単語だけを並べるとこうなる。
IG(門) ALIM(野牛 または 赤い鹿) MA(文字はMADA(土地・国)などのMA 読み替え?)
SUL(若い男) SAG(心) GA(牛乳) NA(人)

GA-NA自体色々な意味があって、この場合は「性的な」(sexual)という意味で読むことができるらしい
また、シュルシャガナはwikiにあるような、SUL-SAGをSU-LUH(浄化の儀式)と読み替えるのかもしれないが、ソースを確認していない


ほかにCDLIで見つけたイガリマ・シュルシャガナの記述は ここ
かなり時代が下って新アッシリア帝国時代の楔文字になっている
紀元前911~612年の間くらい

(CDLI STT 2, 400 より)

an(神様を示す決定詞)の形が先のシュメール時代と違い書きかたが変わっている
また大量に神様の名前が記述されている

シュルシャガナとイガリマと違ってザババは
結構見つけることができたが肝心のシュメール期のは見つからなかった
時代ごとの楔文字の変遷はこんな感じ
ヒッタイトだと「ZABABAKE」という表記もあるがザババのこと

イガリマの古バビロニア部分の抜けは後述する


【判明した楔文字で書いてみる】
まずシュメール時代の楔文字でザババ・シュルシャガナ・イガリマの合成


最初に書いたように漢字と成立過程が似ているので漢字を使っている人からすると
間違えて漢字を覚えた外国人の文字のように見える

ここで注意しなければいけないのは、背景の「楔文字っぽいもの」と違和感があること
最初の引用画像参照
背景の文字は印象として新アッシリアか古ペルシャ文字に近い感じ

次に新アッシリア文字をやや太くして置き換えてみる


こうすることで背景との整合性はとれたが
視聴者の可読性の問題が残る


【多くの人が高確率で文字化けしているであろう表記資料】
読むめにはアッカド、古バビロニア、ヒッタイト、新アッシリアのフォントが必要です
常時インストールする気が無い人はnexusfontなどを使い、見たい時だけインストールするのも手です
下記リンク参照

時代:period ザババ:ZA-BA-BA シュルシャガナ:SHUL-SAG-GA-NA
SHULSHAGANA・ŠULŠAGANA
イガリマ:IGーALIM-MA
IGALIMA
シュメール~アッカド old

𒍝𒁀𒁀

𒂄𒊮𒂵𒈾

𒅅 𒄍 𒈠

古バビロニア

𒍝𒁀𒁀

𒂄𒊮𒂵𒈾

𒅅 - 𒈠

ヒッタイト

𒍝𒁀𒁀

𒂄𒊮𒂵𒈾

𒅅 𒄋 𒈠

新アッシリア new

𒍝𒁀𒁀

𒂄𒊮𒂵𒈾

𒅅 𒄋 𒈠

※font forgeで確認したが、古バビロニアフォントでは新旧どちらの字体のALIMもユニコードの場所に無い
フォントの製作者が作ってないかOSの問題かもしれない


アッカド語でのALIMの古い字体(u+1210D)

𒄍


アッカド語でのALIMの新しい字体(u+1210B)

𒄋


フォントダウンロード先
・アッカド Akkadian http://users.teilar.gr/~g1951d/
・古バビロニア・ヒッタイト・新アッシリアまとめて(古ペルシャはもしかしたらmacなら読めるかもしれない)
 http://www.hethport.uni-wuerzburg.de/cuneifont/
・古バビロニア Santakku https://sites.google.com/site/ancientneareasternstudies/mesopotamia/cuneiform-fonts
・ヒッタイト UllikummiA http://www.etana.org/node/7503 
・新アッシリアAssurbanipal https://sites.google.com/site/ancientneareasternstudies/mesopotamia/cuneiform-fonts

辞書とか
「MUG・SAR」 簡単なシュメール・英語辞典 ここのサイトの Mugsar Sumerian Cuneiform Dictionary PDFから
https://australiansofarabia.wordpress.com/sumerian-cuneiform-english-dictionary-mugsar/

「ePSD」 シュメール・英語辞典2 粘土板とかにもリンクしてるけど、辞書としての整備はいまひとつ
http://psd.museum.upenn.edu/epsd/nepsd-frame.html

「ORACC」シュメールの神様辞典 こちらも粘土板にリンクしています
http://oracc.museum.upenn.edu/amgg/index.html

ヒッタイト関連はTITUS
http://titus.uni-frankfurt.de/indexe.htm

英語の楔文字説明 古ペルシャ語のように楔文字をアルファベットに置き換えて使う分にはこれでいいのかも
https://en.wikipedia.org/wiki/Cuneiform_script

【自分用メモ:シュメールで関連ありそうな人】
ク・バウ(クババ)
エンヘドゥアンナ